インド スラム街ツアー(スラム街の5番街とカースト制度)4話
マティルにパソコン教室を見せられてすっかり「スラム街」のイメージが崩壊した。
またマティルは道なき道。ゴミがあふれ返り日の光も届かぬ真っ暗な居住区内を練り歩く。
一同は前の人のTシャツを掴んではぐれない様にしながら必死で後を追った。
相変わらず部屋の中をじーっと目を凝らしてみると人の目がキョロキョロ動いたり、白い歯が見えてやっと人が住んでいることに気づく。
急にマティルは小屋の中に入った。
そこでは3人の女性がTシャツを作っていた。
それぞれ「Tシャツを渡す人」→「柄のスタンプを押す人」→「たたむ人」と役割分担がある。
マティルは、「このスラム街には皆好き好んで住んでいる。ここには皆に役割があり仕事がある。街で物乞いをするのはナンセンスで楽をしている。」と言った。
完全に目から鱗だった。
スラム街に好きで住んでいる。
スラム街は追いやられたわけでは無く、仕事を探して住む地域だった。
何だか自分が思っていた場所とは全く違っていた。
そんな時、急に道が開けた。
車が2車線程走れるような広さで、土埃りを上げて走っている。
マティルがまたぶっきらぼうに我々に「ここがスラム街の5番街だ。ここには銀行だってある。」と言った。
コンビニエンスストアらしき物も見えるし、ちょっとした八百屋さんらしきものも見える。
「ここには世界に5本の指に入る金持ちと、世界で5本の指に入る貧乏人がいる。」
ともマティルは言った。
もう、自分の固定概念は完全に壊れた。
参加者全員、混乱状態だったが、インドを少し知れたのかもしれない。
何だか少し理解できた事が嬉しく思えた。
マティルは両手を広げて「終わりだ。」と言った。
なんだか「ありがとう。」と素直に思った自分が居た。
マティルはまた不愛想にポケエトに手を突っ込んだままスラム街に消えていった。
骨が見えそうなほどの細い足に、細い腕。日に焼けすぎた肌に狭い肩幅の後ろ姿だけど、ここで生きるマティルが、水道水を捻れば水が飲める国に住んで、面倒くさかったら仕事をさぼって生きている自分よりも、とてもたくましく、限りある命を無駄にせず、魂を燃やして生きているように思えた。